そもそも「しそ」って?
しそは、シソ科シソ属の一年草です。生産地は東アジアが中心で、中国南部からヒマラヤにかけてが原産地とされています。
大きく分けて2種類存在し、緑色の葉の青じそと、赤紫色の葉の赤じそがあります。青じそと、スーパーでよく見かける大葉との違いが分からない、という方も多いでしょう。実は、大葉と青じそは同じものを指しています。市場での呼び名が大葉となっているだけで、青じそであることに変わりありません。
種をまけば毎年のように採れることから、一般家庭の畑などでも多く栽培され、昔はわざわざ購入せずとも手軽に入手できました。スーパーで取り扱われるようになったのは、1961年頃からのことです。
しその葉の形は、エゴマの葉の形と良く似ていますよね。これは、しそがエゴマと同じシソ科に属しているためで、一説によると、エゴマの変種がしそとして広まるようになったといわれています。
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しそに含まれている栄養成分
薬味としてだけではなく、食材のひとつとしても大活躍するしそは、栄養成分を豊富に含んでいます。たとえば、しそに含まれる栄養成分の中には、以下のように健康に欠かせないものが多くあげられます。
・β-カロテン
・ビタミンB群
・ビタミンE
・ビタミンK
・鉄
・カルシウム
・カリウム
・マグネシウム
・リン
なかでもβ-カロテン、カルシウム、ビタミンB2、ビタミンCを豊富に含んでいます。
ここでそれぞれの栄養素について簡単にご紹介します。
β-カロテン
β-カロテンは体内でビタミンAに変わる栄養素です。β-カロテンには、
活性酸素の発生を抑えるはたらきがあるといわれているため、
動脈硬化や心筋梗塞の予防の手助けになるのでは、と注目されています。
しそにはβ-カロテンが、可食部100gあたり11000μg含まれています。β-カロテンを含む食材の代名詞とされる人参よりも多く含まれています(人参は可食部100gあたり9100μg)。
カルシウム
カルシウムは、
体のなかでも骨や歯といった体を支える部分の材料となる栄養素です。また、血液凝固や筋肉の収縮作用にも関わっているとされ、体の機能を維持するために必要不可欠な要素といえます。
カルシウムが不足すると、血中のカルシウム濃度を上げようとして、骨に蓄えられていたカルシウムが放出されると言われています。結果として骨粗しょう症になるリスクが高まるため、日々の食事から十分に摂取しておくことが必要です。
しそのカルシウム量は230mg(可食部100gあたり)と豊富なので、食生活に上手に取り入れると良いでしょう。
摂取したカルシウムを、体内でより効率的に使うには、ビタミンDと一緒に摂るのがおすすめです。ビタミンDは魚介類やきのこ類に多く含まれています。魚介類やきのこ類と、しそを一緒に使った料理を献立に取り入れるのも良いでしょう。
出典:「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(文部科学省)
ビタミンB2
ビタミンB2は、
健康的な肌や髪、爪をつくるためには欠かせない栄養素です。
発育のビタミンとも呼ばれ、体の成長や健康維持をサポートするはたらきがあると言われています。
糖質や脂質、たんぱく質といった栄養素の代謝を促し、エネルギーを産生するときの代謝にも大きく関わっているのが特徴です。エネルギーを消費すればするほどビタミンB2の必要量も増すので、運動や身体をよく動かす方はその分ビタミンB2を積極的に摂取する必要があります。
しそにはビタミンB2が0.34mg(可食部100gあたり)含まれています。美容を意識した食生活を続けたい方や、スタミナを維持したい方は、しそを使った料理を1品プラスしてみてください。
出典:「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(文部科学省)
ビタミンC
ビタミンCは、
皮膚や細胞などに分布するコラーゲンの生成に必要な栄養素です。ビタミンB2と並んで、体の機能を健康的に保つ効果があると言われています。
また、
白血球のはたらきをサポートする成分としても知られ、免疫機能を強化する作用があるのも特徴です。ビタミンCには抗酸化作用もあり、有害な活性酸素のはたらきを抑えることで心疾患や動脈硬化の予防効果も期待できます。
ただし、ビタミンCはストレスにさらされると消費が激しくなるため、注意が必要です。精神的なストレスだけでなく、気温や睡眠不足、過労といったさまざまなストレスが影響します。
忙しくて休養があまり取れていない方、ストレスが溜まっていると感じている方は積極的に摂取してみてください。
しそに含まれるビタミンCは26mg(可食部100gあたり)です。しそは加熱や調理をせずに薬味や味のアクセントとして食べられるので、時間が無く調理ができない日や、疲れた日の献立にも取り入れやすいでしょう。料理の彩りも良くなり、ビタミンCの補給源としてもおすすめです。
出典:「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(文部科学省)
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しそ独特の香り成分とは?
しそがもつ独特の香りは、「ペリルアルデヒド」という成分によるものです。ペリルアルデヒドには強い殺菌作用・防腐作用があり、食中毒の予防効果が期待できるとされています。しそが刺身の添え物として使われているのはこのためです。
また、しその香り成分には嗅覚を刺激して胃酸分泌を促進し、食欲を増進させる効果もあります。胃腸のはたらきをサポートしたり、消化を促進したりする作用もあるので、胃腸の調子が良くないときに重宝する成分です。
中国では、しそが漢方薬のひとつとして活用されており、胃腸症状がある風邪などに対して使われていたと言われています。食欲が出ないときや、胃の疲れが気になるときに上手に取り入れてみると良いでしょう。
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しそを食卓に取り入れる際のポイント
これまで述べてきたように、しそにはさまざまな栄養素や成分が含まれているので、日々の食生活にうまく取り入れたいものです。
ここでは、しそをより効果的に食べるためのコツを紹介します。
おいしいしそを選ぶ
スーパーなどでしそを購入するときに、鮮度や香りが良いものを選ぶことが大切です。以下のポイントを参考にしてみてください。
・葉の色が鮮やかでくすんでいないもの
・茎の切り口が変色していないもの
・葉先までしっかりハリがあるもの
葉の表面が黒ずんでいるものや、葉先が丸まっているものは鮮度が良くありません。また、葉が大きく成長したものは硬くなりやすく、味も落ちる傾向にあります。
葉の大きさは小ぶりなものを選び、全体がやわらかいものを選ぶのがおすすめです。
適量を継続して食べる
しそは、バランス良くビタミン類やミネラルを含んでいる食材です。そのため、目的に合わせて適量を食べるのがおすすめです。
たとえば、しそに含まれるα-リノレン酸は、花粉症をはじめとしたアレルギー症状の緩和が期待できる成分です。α-リノレン酸は体内でEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの多価不飽和脂肪酸に変化します。
これらの成分は、主に青魚に含まれることで有名ですが、しそからも摂取することができます。ただし、体内では合成できない必須脂肪酸であり、
継続的に食事で摂取する必要があります。抗酸化作用や生活習慣病の予防など、さまざまな目的で多くのサプリメントにも配合されています。
α-リノレン酸や各種ビタミン・ミネラルを摂取したい場合は、しそを毎日継続的に食べることをおすすめします。
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しそを使った料理
しそは独特の香味で、肉・魚の両方に合わせることのできる万能な薬味です。
薬味として使うなら、以下の方法があります。
・冷ややっこの上に刻んでのせる
・サラダに加える(刻んでも、そのままでも)
・薬味として使う(そうめん・そばなどに)
しその香りをしっかり楽しめるのは、やはり生の状態で料理に加える方法です。独特の強い香りが苦手な方は、調理したり加工したり、食べ方を変えてみましょう。生だけではなく加熱した料理にも良く合います。おすすめは、以下の調理方法です。
・天ぷら
・肉料理に加える(鶏肉と一緒に焼くなど)
・加工してエキスを活用する(ジュース・シロップ・ゼリーなど)
軽く衣をつけて揚げる天ぷらや、肉料理のアクセントに加えると、独特の強い香りを抑えつつ美味しさを楽しむことができます。
また、大量のしそを摂取できるのが、ジュースやシロップ、ゼリーなど、エキスを活用した料理です。ここでは、しそジュースの素(シロップ)の具体的な作り方を紹介します。
◆しそジュースの素(シロップ)の作り方
【材料】
・しそ 100g
・水 360cc
・砂糖 40g
・酢 60cc
【レシピ】
1.しそ100gあたり360ccの水で煮る。
2.しっかり煮た後、ザルでこし、砂糖40gを加える。
3.酢を60cc加えて冷ましたら完成。
完成したジュースは、水でお好みの濃さに薄めて飲むだけでなく、シロップとしてデザートにかけるのもおすすめです。お好みの濃さに調節したものに、寒天やゼラチンを加えて冷やせば、夏にさっぱりと食べられるしそゼリーにもなります。
ちなみに、赤じそで作ると、色鮮やかな赤じそジュースやゼリーが楽しめます。
しその保存方法
しその保存方法は、冷凍と冷蔵の2通りあります。どちらの場合も重要なのが、乾燥を防ぐことです。
葉の状態でまるごと保存する場合は、冷蔵が最適です。煮沸消毒したボトルに少量の水を入れ、葉の軸の部分のみ浸かるように立てて入れましょう。葉に水があたると、かえって傷んでしまうため、水の量を調節してください。
みじん切りなど切ったものは、冷凍保存がおすすめです。密閉できる保存袋に入れ、しっかりと封をしましょう。調理するときは解凍せず、凍った状態のまま使うようにします。
大量に購入しても、このように適切な保存方法で冷凍庫・冷蔵庫に入れると長持ちします。
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まとめ
強い香味を持ち、抗菌・殺菌効果目的にさまざまな場面で活用されるしそは、そのまま食べても美味しく、豊富な栄養成分を摂取することのできる優秀な食材です。
近年ではそのパワーが改めて注目され、花粉症の時期には、しそジュースのレシピがテレビで放送されるほどです。
こちらで紹介したように、さまざまな効果が期待できるしそを、ぜひ食卓やお茶の時間に取り入れてみてください。
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