独特の風味が和食によく合う「しそ」は、薬味としてだけではなく、ジュースやゼリーなど甘味としても愛されている万能食材です。近年では、改めて「しそ」のパワーが注目されており、料理のバリエーションも増えたことで、以前よりもさらに食べやすく、身近な存在になりました。
そんな「しそ」に秘められたパワーとは、いったいどのようなものなのか。今回は、知っておくと料理に「しそ」をプラスするときの参考にもなる、「しそ」の秘められたパワーについて紹介していきます。
薬味の定番!「しそ」の殺菌効果について
大葉の名でも知られている、しそ。辛味や渋味とはまた別の、他の食材とは異なるしその香りは、料理の薬味として大活躍します。
なぜ、しそを薬味として利用するのか、ご存知でしょうか。独特の風味が料理をより一層味わい深いものにするだけではなく、しそを選ぶれっきとした理由があるのです。そのひとつが、昔から広く知られているしその殺菌効果です。
スーパーでよく見かける「しそ」の役割
スーパーでしそを良く見かけるのは、野菜売り場の他に、鮮魚コーナーではないでしょうか。刺身パックに大根と一緒にツマとして盛り付けられているしそは、彩りのためだけに使用されているわけではありません。
しそを刺身パックに盛り付けるのは、しそのポリフェノールが、生魚の臭みを防いでくれるからです。しそにはポリフェノールが豊富に含まれており、独特の強い香りとともに、ポリフェノールの抗酸化作用で生魚の臭みを和らげてくれます。
また、しその抗酸化作用で、生魚による食中毒を予防する目的もあります。
刺身や海鮮丼を安全に
しそ独特の香りの正体は、ペリルアルデヒドという成分によるものです。実は、この成分の作用も、しそを刺身パックでよく見かける理由のひとつです。ペリルアルデヒドには殺菌作用があり、ポリフェノールの抗酸化作用とともに、食中毒の防止に役立ちます。
しそは、強い香味によって薬味としての役割だけではなく、昔から食材の防腐を目的として利用されてきたのです。このような背景から、和食では、しそが欠かせない食材のひとつとなりました。
しそは殺菌以外にもメリットが
殺菌や抗菌目的で、生魚などとともに昔から利用されてきたしそですが、近年はその他のメリットも注目され、調理方法もさまざまなスタイルが広まりつつあります。ここからは、しその、新しく注目されている効果について紹介していきます。
しそのさまざまな効果に注目して、食卓にしそ料理やスイーツを、ぜひ取り入れてみてください。
アレルギー改善に効果的
しそには、さまざまな栄養成分が含まれています。健康のためにもぜひ積極的に取り入れたい、以下の成分が主に含まれています。
・β-カロテン
・ビタミンB群
・ビタミンE
・ビタミンK
・鉄
・カルシウム
・カリウム
・マグネシウム
・リン
他にも多くの栄養成分を含んでおり、たとえばロスマリン酸やα-リノレン酸などがあげられます。ロスマリン酸は、アレルギー症状を抑える成分として注目されており、花粉症対策としてしそジュースを愛飲する方も増えてきました。
α-リノレン酸は、しその葉や種子に含まれている成分です。近年の研究により、喘息の改善にも一定の効果があることが分かってきています。
しそで免疫力アップ?!
しその注目成分は、まだまだあります。しそには、緑色の葉の青じそと、紫色の葉の赤じその2種類存在しますが、特に青じそに多く含まれるルテオリンという成分は、免疫力をアップさせる力があることが、判明しています。
ルテオリンとはフラボノイドの一種で、肝臓の解毒作用を高めることが分かっています。肝臓は、体内に入り込んだあらゆる毒素を分解する、人が健康に生きていくうえで重要な働きをする器官のひとつです。その肝臓の働きをルテオリンがサポートすることで、免疫力がアップすると考えられています。
抗肥満・抗糖尿病・抗炎症作用・抗がん作用なども研究されており、今やさまざまなサプリメントでおなじみの成分です。体の内側から健康を追求するのであれば、しそは、積極的に日常の食卓へ取り入れたい食材といえます。
お弁当の防腐にも最適!しそを使ったおかず
生魚の防臭・殺菌・抗菌など、さまざまな目的で刺身のツマに活用されているしそは、生魚以外の食材に対しても、防腐目的として利用することができます。
たとえば、多くの方が悩まされるお弁当の食中毒対策に、しそを活用する方法があります。
しその殺菌作用でお弁当をガード
食中毒というと、梅雨の時期や夏に発生するものだと思っていないでしょうか。実は、暖房の効いた冬も要注意の季節です。
冬でもあたたかい環境で過ごすことの多くなった現代では、一年を通して食中毒に注意する必要があります。特に食中毒対策をしっかりしたいお弁当ですが、お弁当に入れる食材をひと工夫するだけで、殺菌効果を高めることができます。
昔ながらの方法といえば、梅干しがありますが、最近は梅干しが苦手な人も多く、梅干しをお弁当に入れる家庭は少なくなってきたのではないでしょうか。
そこで役立つのが、しそです。しその抗菌・殺菌効果で、一年を通して食中毒対策ができます。しそを使った料理をおかずに加えたり、しそをおかずの仕切りに使ったり、お弁当の彩りとしてもしそを取り入れてみてください。
おすすめは、しそを細かく刻んで使うことです。細かく刻むことで、しその殺菌効果をより高めることができるためです。しそを使った料理だけではなく、細かく刻んだしそを、おかずの上に薬味として振りかける方法もあります。
お手軽しそお弁当レシピ
最後に、お弁当のおかずにも最適なしそ料理を紹介します。手軽に作れるレシピなので、ぜひお弁当の食中毒対策に活用してみてください。
■青じそのおにぎり
青じそを細かく刻んでご飯に混ぜるだけの簡単な料理です。味付けと香り付けに、以下の材料をご飯と混ぜてからにぎると、美味しさがアップします。
・ごま油 …小さじ1
・炒りごま …小さじ1
・塩 …適量
分量は、お茶碗1杯分です。ご飯の量に合わせて調節してください。刻んだ青じそだけでは苦手、というお子さまも、ごま油や炒りごまの風味が加わると、食べやすくなります。
■梅の鶏つくねのしそ巻
肉料理が食べたいときには、梅の鶏つくねのしそ巻がおすすめです。梅としそ、そして鶏肉の相性は抜群で、梅のクエン酸やしそのビタミン類とともに、鶏肉のタンパク質を摂取できるため、疲労回復や栄養面でもバランスの良い料理です。
作り方は、鶏のひき肉200g(約2人分)に以下の材料を混ぜます。
・玉ねぎ(みじん切り) …大4分の1個 中2分の1個
・梅干し(細かく叩く) …2つ
・パン粉 …大さじ2〜3
・卵白 …1個分
・塩・こしょう・しょうゆ …適量
これらをすべて混ぜ、小判型に形を整えます。しそをつくね1つに1枚ずつ巻き、両面を焼き色がつくまで焼いたら、料理酒を振ってフタをし、蒸し焼きにします。●分程度加熱し、竹串を刺して、透明な液が出てくればOKです。
ポン酢を付けて食べたり、おろしポン酢で食べてもさっぱり美味しく頂けます。
辛子じょうゆなどもオススメですよ。
■鶏むね肉の梅しそロール
見た目がおしゃれなロール状で、お弁当のおかずとしてだけでなく、パーティー料理としても最適です。さっぱりした梅味で、夏バテ気味の時期にも食べやすい味に仕上がります。
作り方は、鶏むね肉200g(大体1枚)(約2人分)と、以下の材料を用意します。
・梅干し(細かく叩く) …5~7個
・大葉 …5枚
・和風だしの素 …小さじ1
・酒 …大さじ1
・砂糖 …小さじ1
・塩 …少々
鶏むね肉を包丁で開きます。その後叩いて均等な厚さになるよう伸ばします。砂糖と塩をもみ込んで、皮を上にして置きます。
梅干しとしそを細かく刻み、和風だしの素と混ぜ合わせたものを鶏むね肉の上に塗り、酒を振ったら肉を巻きます。巻いた肉をラップでしっかり包み、電子レンジで5分程度加熱します。時間は様子を見て調節してください。10秒ずつ調整し、中までしっかり加熱しましょう。竹串を刺して、透明な液が出てくればOKです。
出来上がったら、ラップをとって輪切りにし、盛り付けて完成です。和風だしをほんのり感じるさっぱりした味は、老若男女問わず食べやすく、油を使わないため気になるカロリーも控えめです。
まとめ
しその独特の香りは、抗菌・殺菌作用を持つ成分によるものです。そのまま刺身のツマとして使っても、お弁当の仕切りやおかずに使っても、彩りを添えるとともに、食中毒効果を期待できる優れものです。
お弁当に使う際は、細かく刻むとより一層抗菌・殺菌効果を発揮してくれます。さわやかなしその香りとともに、安心して食べられるお弁当になります。こちらで紹介したレシピを参考に、しそ料理をぜひお弁当に取り入れてみてください。
<記事監修>
管理栄養士
渡辺愛理(わたなべあいり)
大学卒業後、総合病院・介護老人福祉施設での勤務を経て、フリーランス管理栄養士となる。
自身が冷え性に長年悩んでいた経緯から、冷え性に悩む方への食事カウンセリングや料理教室講師をメインに、そのほかレシピ監修やコラム執筆を行っている。