かゆみは、脳から「かきたい」という信号が伝わって起こる。
かゆみは、脳から「かきたい」という信号が伝わって起こる感覚です。原因は、温度や湿度、食事内容、刺激などの外的要因、また、接触性皮膚炎、じんましん、アトピー性皮膚炎、乾皮症などの皮膚疾患が考えられます。さらに、加齢に伴い皮膚のヒアルロン酸量、水分量や皮脂量が減少するために、皮膚のバリア機能が低下してかゆみを感じやすくなるといわれています。
肌が乾燥して敏感になると、強いかゆみに襲われてかきむしってしまうこともあるでしょう。しかし、かゆみによる「ひっかき行動」は、皮膚を傷付けるだけでなくかゆみの増強を招き、さらにかいてしまうという悪循環を起こします。「かきたい」という強い衝動を抑えるためには、かかずにかゆみ止め治療薬を塗ることが大切ですが、かゆみを引き起こさないためには、日々のスキンケアで肌を保湿して皮膚のバリア機能をサポートすることがとても重要です。
皮膚科の野村有子医師は「かゆみがある場合は、市販のものでもかゆみ止め成分が入っている医薬品を選ぶと良いでしょう。かゆい範囲がピンポイントならチューブタイプ、背中や脚などの広い範囲なら塗り伸ばしやすいローションタイプがおすすめです。刷り込まないように、肌をいたわるようにやさしく塗ることも大切です」とアドバイスをしています。
かゆみをコントロールして睡眠の質を上げる
医療従事者の方から、「かゆいから背中をかいてほしい」「何かかゆみ止めを塗ってほしい」と夜中にかゆみを訴えるシニアが多いという話をよく聞きます。そこで、老人医療に詳しい精神科医の古賀良彦先生は、かゆみと睡眠の質に注目し、ユースキン製薬と「かゆみと睡眠」の共同研究を行いました。普段からかゆみを訴えている方に、非ステロイド系の市販のかゆみ止めローションを2週間、寝る前に塗布したところ、皮膚の乾燥が改善され、睡眠の質も改善できることがわかりました。
気になる背中のかゆみ。マスクによるかゆみもケアして
冬の乾燥だけでなく、春と秋の花粉症、夏の汗など一年を通して「かゆみ」はつらいもの。かゆみは「かきたい」という衝動なので、その衝動を断ち切るためには、かゆみ止め治療薬でのケアが有効です。さらに、かゆみが起きやすく自分では手が届かない背中のかゆみには、クリームやローションを背中に塗布する専用のグッズも販売されているので試してみてください。
最近は、マスクによる顔のかゆみを訴える方が増えています。その場合もかきむしらず、すぐにかゆみ止め治療薬を塗ってください。また、日々のスキンケアを見直して、肌をしっかり保湿して皮膚のバリア機能をサポートしましょう。
古賀良彦医師からのワンポイントアドバイス
昨今、リモートワークの導入により、出社しないことでかえって生活のリズムが狂って睡眠時間がバラバラになってしまい、睡眠の質が悪くなったという報告もあります。加えてコロナ禍では、運動の機会が減って運動不足が続くことで、さらに睡眠の質が下がってしまいます。睡眠の質を保つことは、メンタルヘルスの観点からもとても重要です。
野村有子医師からのワンポイントアドバイス
かゆみ対策には日頃のスキンケアがとても大切です。まず皮膚が乾燥しないように保湿ケアを心がけ、そしてかゆい部分にはかゆみ止め治療薬でのケアを行います。かゆみがあるとどうしてもイライラしたり、集中力が下がったりしてしまうもの。かゆくて眠れず睡眠の質が悪くなると、皮膚の回復力も落ちて肌荒れの元にもなります。たかが「かゆみ」と思わず、ケアを行ってもかゆみがなかなか治まらないときは、気軽に皮膚科を受診してください。
野村皮膚科医院 野村 有子 院長
医学博士。慶應義塾大学医学部卒。
横浜市に野村皮膚科医院を開業。
わかりやすい丁寧な指導が評判の関東屈指の人気皮膚科医。
最新の肌診断機器の導入や、アトピー性皮膚炎患者専用モデルルーム、アレルギー対応カフェも併設されている。アトピー性皮膚炎や乾燥性湿疹を中心に、男女を問わず幅広い年代の皮膚疾患の診断、治療を行っている。