汗によるかゆみの原因
暖かくなってくると外出の機会が増え、汗をかくことも増えてきます。ニオイやベタつきが気になる時期ですが、汗による不快な症状のなかでも注意が必要なのは、肌のかゆみです。
まずは、汗によるかゆみの原因をみていきましょう。
汗の成分による刺激
汗ばむ季節のかゆみの原因は様々ですが、なかでも代表的なのが、汗の成分によるかゆみです。
私たちの体から出る汗には、塩分やアンモニアといった成分が含まれています。量としてはそれほど多くないものの、このような汗の成分は肌を刺激して、かゆみを引き起こすため注意が必要です。
汗に含まれる水分が乾いても、塩分やアンモニアは蒸発しません。シャワーなどで洗い流さない限り、肌に刺激となる汗の成分はいつまでも肌の表面に残るため、しつこいかゆみがなかなか治まらないのです。
汗の成分によるかゆみは広い範囲に症状が現れるのが特徴で、皮膚のバリア機能が低下しているときに起こりやすい傾向があります。
皮膚のバリア機能とは、肌の最も外側にある「角層」と呼ばれる部分がもつ、体を守る機能です。健康な状態の角層は、細胞がきれいに整列し結びつくことで、外から加わる刺激から体をガードしています。
ところが、なんらかの原因で角層の細胞間に隙間ができると、肌を守る働きが低下してしまいます。その結果、肌が敏感になり、ちょっとした刺激でかゆみが生じやすくなってしまうのです。
皮膚のバリア機能は、さまざまな要因で低下してしまいます。加齢やターンオーバーの乱れのほか、紫外線によるダメージ、そして肌の乾燥もバリア機能に影響を与えます。また、高温での入浴やこすり洗いもバリア機能が低下する一因なので、日頃の生活の仕方も見直してみましょう。
あせも
「あせも」は、汗ばむ季節のかゆみを引き起こす原因の一つです。
あせもとは、大量の汗が原因で起きる発疹で、正式には「汗疹(かんしん)」と呼ばれています。大量の汗を急激にかいたときに、汗がスムーズに排出されないことで、このような皮膚疾患が生じます。
あせもは一般的に、体温が高く汗をかきやすい乳幼児や、子供の肌トラブルとして捉えられることが多いものの、大人にも発症リスクがあるため油断はできません。
暑い季節は、汗とともに大量に分泌される皮脂や汚れが汗腺に詰まりやすい傾向にあります。汗腺の内側に汗が溜まることで周囲の細胞が刺激を受け、炎症や水ぶくれとなった状態があせもです。
一口にあせもといっても、いくつか種類があり、汗腺が詰まる場所の深さによって症状は異なります。
例えば、皮膚のごく浅い部分で汗腺が詰まった場合には、角層の内部に白や透明の小さな水疱ができます。これは「水晶様汗疹」と呼ばれる症状で、炎症によるかゆみはほとんどありません。
一方、代表的なあせもの症状は、「紅色汗疹」と呼ばれ、表皮の近くで汗腺のつまりが起き、破裂することで、肌表面に赤みのあるぶつぶつができます。
紅色汗疹は強いかゆみが特徴で、かけばかくほどかゆみが増し、ヒリヒリすることがあります。また汗腺が詰まった部分に細菌が増殖し、膿がでることもあるため、汗っかきな方や乳幼児は特に注意が必要です。
あせもは、夏の高温多湿な環境下でスポーツをしているときなど、汗をたくさんかくとできやすくなります。その他にも、ベルト、下着の締め付けのように、肌の通気性が悪い部位にもできることがあるので注意しましょう。
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汗によるかゆみを抑える方法
それでは、汗によるかゆみを抑える方法を紹介しましょう。
汗によるかゆみを長引かせないためには、早めの対処が必要です。すぐに治まると思っていても、暑い時期は次から次へと汗が噴き出るため、いつのまにか症状が悪化していることがあります。こまめに肌の状態をチェックしながら、日常的にケアに取り組むことが大切です。
かゆくてもかかないようにする
肌がかゆいと何度もかいたり、爪を立ててひっかいたりしがちです。しかし、肌をかきむしると余計にかゆみが広がって悪化するため、できるだけかかないようにしてください。
肌をかくと角層にダメージを与え、さらなるバリア機能の低下を招きます。また、皮膚が傷ついて化膿するリスクもあるため、かき壊さないよう注意しましょう。
かゆみを感じるとどうしても気になってしまいますが、できるだけ意識しないことが大切です。
かゆみ止めを塗ってうるおいを与える
とはいえ、かゆみを我慢するのは難しいですよね。かゆみがあるときは、すぐにかゆみ止めを塗りましょう。素早くかゆみを止めて炎症を抑えることができます。
また、皮膚のバリア機能の低下した状態に汗をかくことでかゆみが起きている場合、うるおいを与えて肌の環境を整える必要もあります。うるおい成分が入ったかゆみ止めを選べば、かゆみを止めるとともに肌にうるおいを与えることができるでしょう。
日頃のスキンケアでは、ローションで水分を与えた後、乳液、クリームといった保湿アイテムを使って、しっかり保湿しましょう。
かゆい部分を冷やす
汗をかいて肌がかゆいときは、患部を冷やしてください。
汗の刺激で炎症を起こした肌は、熱をもっています。患部を冷やして熱感を抑えると心地よく、しつこいかゆみが和らぐため、ぜひ試してみてください。
保冷剤をタオルやハンカチでくるんで冷やすのがおすすめです。保冷剤や氷を直接患部に当て続けると凍傷になる恐れがあるため、タオルで包んでじんわりと冷却するのがポイントです。
皮膚科に行く
汗によるかゆみの症状がひどい場合は、無理をせず皮膚科を受診しましょう。広範囲のかゆみやヒリヒリとした痛みがあるときは、たかがかゆみと軽く考えず、医師の診断を受けましょう。
特に、あせもの場合は、本人やまわりが思っていた以上に重症化していることもあるため、注意が必要です。かき壊して化膿すると治りにくくなり、治療が長引きます。最悪の場合、肌に跡が残ってしまうこともあるため、早めの受診を検討してください。
肌のかゆみの治療には、ステロイド外用剤を使って炎症を抑えるのが一般的です。医師の指導に従い、肌を清潔にしてから薬を塗りましょう。
ステロイド外用剤は市販薬として、薬局やドラッグストアでも購入することができます。ですが、症状がひどい場合、自己判断での使用は禁物です。他の皮膚疾患が隠れている可能性もあるため、医師の診断を受け、適切な処方箋をもらってください。
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汗によるかゆみを予防するには
汗によるかゆみは、一度生じるとなかなか治まりません。イライラすると仕事や勉強にも差し支えるため、日頃から予防のための対策をしておくことが大事です。
最後に、汗によるかゆみを予防する方法をみていきましょう。
汗による刺激を避ける
汗ばむ季節のかゆみを抑えるには、汗による刺激を避けることが大切です。汗の刺激成分が、長時間肌に付着しないように対策することで、かゆみでイライラすることが少なくなるでしょう。
とはいえ、汗は体に悪いものと決めつけてはいけません。汗は本来、体温調節をする重要な役割を担っており、汗の水分が蒸発することによって表面の熱を奪い、体温を下げます。
また、汗は皮脂と混ざることで皮脂膜を作り、肌を乾燥から守ります。そのため、健やかな肌のためにも、汗は必要不可欠です。
汗によるかゆみを防ぐために、「冷房を入れてできるだけ発汗を抑える」、「極力運動をしない」という考え方はあるものの、汗をかくことにはたくさんのメリットがあります。汗をかくのを避けるのではなく、汗を肌に付着したままにしない工夫をしましょう。
また、汗による刺激を受けにくい健やかな肌でいるためには、夏でもしっかりボディケアをすることが大切です。さっぱりとした使用感のジェルやローションを使えば、広い範囲に伸ばしやすく、ベタつきも気にならないでしょう。
特に、汗がたまりやすくあせもができやすい場所である首まわりやひじ・ひざの関節裏に、重点的に保湿剤を塗るのがおすすめです。保湿することで肌のバリア機能をサポートできます。
通気性の良い衣類を選ぶ
汗による肌への刺激を防ぐためには、服装に注意することも大切です。気候や気温に合せて衣替えを行い、過ごしやすい服装を心がけてください。
特に肌着は、通気性と吸湿性の良さを重視して選ぶ必要があります。肌着が蒸れると汗の分泌量が増え、それだけ肌が刺激を受ける可能性が高まります。
暑い季節の肌着を選ぶなら、綿100%の生地を使ったものがおすすめです。綿は吸湿性に優れた素材で、肌触りもやさしく、肌に負担をかけにくい性質が魅力です。
とはいえ、一度濡れた肌着は乾きにくく、濡れたまま放置すると雑菌が繁殖するリスクがあります。汗がかゆみの原因となるだけでなく、嫌なニオイやベタつきで不快度が増すため、汗をかいたら早めの着替えを心がけましょう。
最近は、化学繊維を使用した速乾性にすぐれた肌着も登場しています。肌着の素材は着心地を大きく左右するため、自分の肌に合った衣類を選ぶようにしましょう。
汗をかいたらすぐ拭き取る
汗によるかゆみの予防には、肌を清潔に保つことが欠かせません。少量でも、かいた汗をそのまま放置するのは厳禁です。早めに汗を取り除いてください。
汗をかいたら、お風呂やシャワーで洗い流すのが理想です。やさしく、ていねいに洗いましょう。ゴシゴシこすると肌を刺激し、バリア機能の低下を招いてかゆみを助長してしまいます。たっぷりの泡でやさしく洗い、ボディソープはしっかり洗い流しましょう。入浴後はなるべく早く肌のお手入れをして、保湿剤でしっかりうるおしてください。
とはいえ、仕事中や外出先での入浴は難しいため、濡れたタオルやハンカチで汗を拭き取るだけでも十分です。汗を拭いて濡れたハンカチには雑菌が繁殖しやすいので、暑い季節の外出には、何枚か替えのハンカチを持参しましょう。
外出先では、ドラッグストアなどで販売されている「汗拭きシート」を使うと便利です。清涼感のあるタイプや爽やかな香りが付いた商品もあり、ベタベタ肌がすっきり改善できます。
ただし敏感肌の方は、アルコールやメントールなどの清涼成分の含まれているシートには注意が必要です。汗や汚れを良く取り除く一方、肌に刺激となったり、保湿に必要な皮脂を奪って乾燥を招いたりする場合もあります。
敏感肌の方やアルコールに過敏な方は、低刺激性やアルコールフリーの汗拭きシートを使用することがおすすめです。
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まとめ
汗のニオイや肌のベタつきが気になる季節は、ていねいなスキンケアが必要です。汗をたくさんかくほどかゆみが起きやすいため、日頃からしっかり全身のスキンケアをしてください。
特に、肌の保湿は、皮膚のバリア機能をサポートして汗によるかゆみを抑えるのに欠かせません。スキンケア用品も活用して、汗の刺激に負けない、健やかな肌をキープしましょう。
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